今後、アトピー性皮膚炎対策に、汗の機能が見直されるかもしれません

最近、汗をかく重要性を問う専門家が増えてきました。

ここ数年前からは、洗剤や柔軟剤のテレビCMでは、しきりに「汗臭さを徹底防臭」などを謳い、デオドラント製品では、「汗をブロック」や、汗をかいたら「シートで拭いて身だしなみ」を謳っています。

一般家庭でも、各部屋にエアコンが設置されている世帯が多くなり、汗をかくのは、通勤時間とお風呂・シャワー後などの特定の時間帯しかない、という生活を送っている人も多いかと思います。


アトピー性皮膚炎の特徴と発汗の関係

アトピー性皮膚炎の人の皮膚は乾いていること自体が、その症状の一つですが、汗をかくと痒みが強くなるため、現在では、「汗」は症状の増悪原因の一つとして、なるべく汗をかかないように指導されているかと思います。

しかし、現在のアトピー性皮膚炎の治療の標準治療方法に対し、異議を唱える専門家が増えてきました。

ところで、一言で汗と言っても、「不感発汗」と「有感発汗」があります。「不感発汗」とは、「基礎発汗」といい、安静時に認める発汗のことで、「有感発汗」とは、「温熱発汗」といい、運動したときや、暑さを感じた時にでる汗のことです。

そして、新たにアトピー性皮膚炎に関連していると思われているのが、不感発汗である基礎発汗の方です。


今年(2018年)の日本アレルギー学会誌(アレルギー)の6月号と7月号に寄稿されていた、汗とアレルギーの関連について


不感発汗(基礎発汗)は、普段は汗として認識できない汗ですが、汗の中には、電解質や尿素などが含まれており、皮膚の潤いを維持し、汗に含まれる抗菌成分などによる免疫機能などの役割を果たしています。また、薬剤や金属など、体にとって不要なものも汗には含まれており、その排出の機能も担っています。

アトピー性皮膚炎の方の肌は、この不感発汗(基礎発汗)の力が低下し、肌の潤いが失われ、本来皮膚が持っている防御機能が低下していることが分かってきたそうです。


それでは、汗をかけばよいのか?

そうでもないそうです。

小児のアトピー性皮膚炎の特徴として、膝裏や脇、肘のところに汗をかきやすく痒みが強くなるが、他の部位は乾燥していて、カサカサしています。

その原因として、人間の皮膚は、常に不感発汗(基礎発汗)により体温調節をしていますが、アトピー性皮膚炎の方の皮膚は乾燥しているので、乾燥しにくい膝裏や脇、肘のところでそのバランスを取ろうとして、より、汗をかきやすくなっている、と考えられているそうです。つまり、代償性の多発汗が起こっている、というのです。その証拠に、体が大きく成長し、体表面積が広くなるにしたがって、膝裏や脇、肘のところの発汗量が減ってきて、痒みを訴えることが少なくなってくるそうです。


高温多湿の日本の夏の落とし穴

日本の夏は高温多湿のため、ちょっと外に出ただけで大量の汗をかきます。アトピー性皮膚炎の人も、大量の汗をかきます。しかし、この時に出てくる汗は、有感発汗(温熱発汗)といい、この発汗能は、アトピー性皮膚炎になっても低下しないということです。

私たちは、体温が高くなり過ぎると汗をかきます。汗をかくことで、蒸発時に熱が逃げるメカニズムによって体温を下げ、体温を一定に保とうとしています。

ところが、湿度が高くなりすぎると、汗が蒸発できなくなり、皮膚は過剰に湿った状態が長時間続くことになります。そうなると、今度は、汗を出す管が詰まってしまい、皮膚炎を起こしやすくなり、汗をかけなくなります。

汗がかけなくなると、皮膚表面から熱を放出することができなくなるため、皮膚に熱がこもってしまい、これが逆に乾燥の原因になり、痒みが引き起こされる、という悪循環に陥ってしまうそうです。

そのため、アトピー性皮膚炎の対策として、まず、不感発汗(基礎発汗)能を上げることが重要になるそうです。そのためには、皮膚を乾燥させない事が重要とのことで、十分な保湿を心がけるとよいそうです。7月号の筆者である塩原杏林大学栄誉教授らの研究によると、ペパリン類似物質含有クリームの大量塗布のみが、著明に基礎発汗量を増やしたそうです。

また、過剰な汗による皮膚の湿度は、欠汗を引き起こし乾燥を悪化させるため、こまめに汗を洗い流し、保湿することが大切だといいます。大量に汗をかいた場合は、濡れたタオルで拭くと、汗だけでなく、適度な湿気が蒸発する際に皮膚にこもった熱が気化熱としてでていくので、乾いたタオルでふくより効果的だといいます。

最近なんか皮膚がカサカサするな、と思われている方は、もしかしたら、多湿により汗をかく機能が落ちたために、欠汗を引き起こしているのかもしれません。この夏は特に高温多湿が続いているので、アトピー性皮膚炎の方だけでなく、汗を拭くときは濡れたタオルと使うと、気化熱として熱を放出しやすくなるので、皮膚炎の予防になるかと思われます。そして、乾燥気味の室内では、保湿をしっかりと行い、不感発汗(基礎発汗)の機能が低下しないように心がけることが大切だということです。


参考資料:

一般社団法人 日本アレルギー学会 アレルギー vol. 67. Jun. 2018. 室田浩之 et. al. 意外な汗の免疫機能とその制御

一般社団法人 日本アレルギー学会 アレルギー vol. 67. Jul. 2018. 塩原哲夫. 汗をかかないとアレルギーになる

記事:もとしろけいこ(Well being lab代表)

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