かゆみと脳の機能について
アトピー性皮膚炎のかゆみはがまんしにくい
アトピー性皮膚炎といえば、痒みが一番気になる慢性皮膚疾患で、QOL(生活の質)を下げている最大の原因かと思います。
アトピー性皮膚炎のかゆみの特徴として
- かゆみ閾値の低下
- かゆみ過敏
- ヒスタミン誘発性の皮内反応の低下
- 嗜好的掻破行動の存在
皮膚をかくと気持ちが良い
皮膚をかくことが我慢できない
- 夜間のかゆみが強い
- 汗、乾燥、ストレスなどの増悪因子が多数(かゆみを引き起こす原因が数多い)
- 抗ヒスタミン薬が効きにくい
があげられています。
「かゆみ」はアトピー性皮膚炎以外でも起こり、ついつい皮膚をかいてしまいたく衝動が起こりますが、通常のかゆみとアトピー性皮膚炎のかゆみの大きな違いとして、
アトピー性皮膚炎以外のかゆみ:がまんして皮膚をひっかかなければ、次第にかゆみが治まることが多い。ひっかいてもそのうち「かゆみ」は落ち着く。
アトピー性皮膚炎のかゆみ:「かゆみ過敏」を引き起こしているため、かく(掻破)と余計にかゆみが悪化し、「かゆみ」が長引いたり、悪化を引き起こしてしまう。(Itch scratch cycleと呼ばれている状態になる)。
かゆみ:末梢性と中枢性
末梢性のかゆみのメカニズムとしては、皮膚のバリア機能障害(乾燥肌)と炎症、神経線維の変化(組織学的変化)など、本来の皮膚の機能の障害が挙げられています。
中枢性のかゆみのメカニズムとしては、末梢神経から送られた情報を処理する脳の場所(脳には各々の場所にそれぞれの役割がある)の働きによるものが考えられています。
今、注目されているのが中枢性のかゆみメカニズム
MRI(fMRI)やPETなど、脳内の生理的活性を画像化(イメージング)する方法で、脳のどの部位がどのように反応しているのかを調べる方法が研究に用いられています。
そこで分かってきたのが、アトピー性皮膚炎の人の「かゆみ」には、そうでない人と比較すると、より多くの脳の部分が活発に反応している、とのことです。また、「かゆみの強さ」と活発に反応している「脳の反応の強さ」も相関しているそうです。
アトピー性皮膚炎から引き起こされる「かゆみ」は、通常なら「かゆみ」と感じない刺激でかゆみが誘発されたり、「ちょっとかゆいな」というレベルの刺激でも「強いかゆみ」と感じてしまうという特徴があります。また、普通であれば、「かゆみ」を感じていない時に、「皮膚をかきたい」という衝動は起こらないのに、アトピー性皮膚炎の人の掻破行動(皮膚をかく行動)は、かゆみを感じていなくても起こり、「かくと気持いから」という理由でかいてしまうこと行動が見られるそうです。
これらは中枢性のかゆみメカニズムとして考えられており、現在は、この中枢性のかゆみのメカニズムが注目を浴びているそうです。
かゆみを感じているのは脳
現在は、いかにかゆみを抑えるかという治療が中心に行われていますが、そもそも、かゆみを感じているのは脳であるため、脳がかゆみを感じなければ、アトピー性皮膚炎の人の「Itch scratch cycle:痒い→掻く→悪化する→もっと痒くなる→もっと掻くという悪循環」を絶つことができるのでは、と考えられており、現在では脳をターゲットにした治療方法を開発されつつあるそうです。
今後、もっと脳と認知神経科学(かゆみを感じる脳神経の場所と役割)が発展して、各脳部位の役割がさらに明確になれば、「かゆみの大元を遮断する」という治療法が実現されるかもしれません。
参考資料:
日本アレルギー学会会報誌
アレルギー Vol. 66 No. 6.2017.石氏陽三.p 777-782.
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